イジメ返し3
「終わった……。何もかも終わった……」

薄暗いマンガ喫茶のフラットシートの上にあぐらをかく。

口からは「終わった」という言葉が延々と垂れながらされる。

ドンっと右隣の薄い壁が叩かれ、直後舌打ちが聞こえる。

普段だったら隣のボックスの扉を開けて怒鳴りつけているところだ。

でも、今の俺にそんな気力は残っていなかった。

上はブレザーに下はジャージというとんでもないいで立ちで文句を言いに行ったところで鼻で笑われるのは目に見えている。

着替えのジャージを渡された俺はそそくさと着替えて学校を後にした。

美波に対して抱いていた憎悪の念は消え失せ、ぽっきり折れてしまった自尊心を奮い立たせようと躍起になっている。

そのとき、トントンっと部屋の扉が遠慮がちに叩かれた。

「お客様、大変申し訳ありませんが当店は18歳未満の方は22時までしかご利用いただけません。お会計の方お願いいたします」

ふとポケットのスマホを見る。けれど、画面は真っ黒なままだ。

充電が切れていたことにも気付かなかった。

俺は伝票を手に取ると、情けないかっこうのまま立ち上がった。
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