イジメ返し3
これからどうやって生きて行けばいいんだ。

家までの道中トボトボとそんなことを考える。

あんな醜態をさらしてしまった以上、学校へ行くことは俺のプライドが許さない。

けれど、幸いなことに高校は一つではない。

通信制の学校へ編入するのも一つの手かもしれない。

大丈夫だ。まだ選択肢は無限に残っている。

これは全てをリセットするいい機会だと思うとしよう。

美波とも手が切れ、自由を手にした今、多少の犠牲は仕方がない。

ポジティブに考えないとおかしくなってしまいそうだった。

自尊心はボロボロだったけれど、まだすべてが終わったと決めるのは早すぎる。

自宅アパートの前まで着いてからふと今朝の出来事を思い出した。

『翔平に大切な話があるの。あなたの学校でのこと。今日の夜、ちゃんと話しましょう。お願いだから、家に帰ってきて。約束よ?』

母親にそう頼まれていたのもすっかり忘れていた。

どんよりと気持ちが重たくなる。

右手を見つめる。

母親に手を挙げたのは今日が初めてだった。

「くそっ……」

全てをやり直そう。明日からリセットする。

母にも言おう。もう美波の家に金を払う必要なんてないと。

それに、高校を辞めた後、俺がバイトをして家計を助ければ母さんも助かるはずだ。

散々迷惑をかけてきた。

そんな俺を母さんは一度だって見捨てようとはしなかった。

明日からは心を入れ替えて親孝行していこう。

新しい未来が見え始めた。

決意を決めた俺はゆっくりとアパートの階段を上っていった。
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