イジメ返し3
全神経を耳に集中させる。

『早く貸せ!』

荒々しい声の後、ノイズが入る。

『てめぇ、どういうつもりだよ。なんで入ってないんだ?』

『もう無理です……。親にもバレたみたいで……。お金の隠し場所も替えられちゃってるし……』

『だったら、新しい隠し場所探せばいいだろうが!』

『そんな……!』

『お前、両親だけじゃなくてババァとも一緒に住んでんだろ?ババァも孫の為なら喜んで出すだろ。今度はババァの財布から抜いて来いよ!』

この会話には覚えがある。

これは踊り場でカツアゲしているときの音声のようだ。

そういえば……。

ふと生物室でのカンナとのやり取りが脳裏によみがえる。

『こないだ翔平君が踊り場でお金を巻き上げてた男の子のパパって夢原製菓の常務取締役だよぉ』

『……常務?』

『すごーい力を持った偉い人だよぉ。翔平君のママをクビにするのなんて簡単にできちゃう人!』

まさか……そんな……。

『今日持ってこなかったんだから、明日は利子付けて2万で許してやるよ』

『無理です……』

『ハァ!?』

そこでイヤホンを耳から引き抜いた。

マズい。こんな音声が家にあるということはすでに証拠を握られているということだ。

そして、母は知っただろう。

俺が今までしてきたことのすべてを。
< 164 / 275 >

この作品をシェア

pagetop