イジメ返し3
「母さん……?」

そういえば、玄関を開けても母の返答はなかった。

普段だったらどんなに遅く帰ってきても『おかえり』と迎え入れてくれるのに。

この写真と音声を聞いて相当怒っているんだろうか。

それとも気に病んで眠ってしまったんだろうか。

「寝てんのか?」

恐る恐る母の寝室の扉をノックしたものの返事はない。

「遅くなって悪かった。つーか、リビングの写真とかみた。ちゃんと話聞くから出てきてくんない?」

扉越しに問いかけても何の返事もしてくれない母に苛立ちを覚える。

「聞いてんのかよ?」

そう言いながら部屋の扉を開けると、中は真っ暗だった。

扉を開けた瞬間、思わず顔を歪めた。

強烈なアンモニア臭と鉄の入り混じった匂いがする。


「母さん?」

部屋の電気をつけた瞬間、飛び込んできたのは血の海に横たわっている母の姿だった。
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