イジメ返し3
俺はバカだったんだ。

世界で一番嫌いな親父と全く同じことをして生きてきたんだから。

母に暴力を振るう親父の背中を俺は幼い頃震えながら見つめていた。

弱い者に暴力をふるい、力で相手を弱らせてねじ伏せる行為を肌で感じゾッとした。

幼いながらに親父が間違っているということは理解していた。

それなのに、俺はいつからか親父と同じ行動をとるようになる。

自分で汗水たらして金を稼ぐことなく、弱い誰かから巻き上げる。

恫喝し、暴力を振るえば大抵の相手は言いなりになり金を運んできた。

美波も『翔平、さすがじゃん!あたしが見込んだ男だけあるね!』と俺をおだてた。

最初に感じていた戸惑いや罪悪感は回数をこなすたびに消え失せてしまった。

さながらモンスターのようだったに違いない。

人を傷つけ、奪い、苦しめる行為を平気で行う。


『翔平君が人から奪い取ったお金で楽しく遊んでいる間、取られた人はどんな気持ちだったんだろうねぇ。悔しくてたまらなかったんだろうなぁ』

『そんなの奪われる奴が悪いんだろ?嫌だったら抵抗すればいいじゃねぇか』

俺はカンナにそう答えた。

でも、それは違う。奪われる奴が悪いのではない。

奪うやつが悪いのだ。

分かっていたのに、いざ自分が奪う側になると適当な言い訳をしてごまかし、目を反らしてきた。

ストレスが溜まると、誰かをターゲットにして暴力を振るい、自尊心をボロボロにさせる。

俺にとってそれはただの退屈しのぎのゲームの様なものだった。

相手がどれぐらいの苦痛を感じているかなんて考えたこともないし、ただ自分が面白いと思ったことをやっていただけ。

その行為の行きつく先は、母の死だった。

もしも、母との約束通り早い時間に帰っていれば……。

一階に住む高齢夫婦に『救急車を呼んでほしい』と頼んですぐに信じてもらえるような人柄だったら。そんな行いを日ごろから行っていれば。

そうすれば母の死は避けられたのかもしれない。
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