イジメ返し3
遠くの方からパトカーの音が聞こえてきた。

いつ、俺は道を外れてしまったんだろう。

目をつぶると、今日の生物室での一件が脳裏に浮かんだ。

誰一人として俺に駆け寄ってくれる人はいなかった。

森田との差を見せつけられた瞬間だった。

俺にはもう何も残されていない。

もう本当に何もかも終わった。終わってしまった。


『人を傷付けたら自分もいつか傷付くの。ズルい人間が得をするなんて許されないんだよ?因果応報っていう言葉、バカな翔平君は知らないかなぁ?でも、安心してねぇ。奪われるのがどんなに辛いかカンナが今からちゃーんと教えてあげる』

『今まで翔平君が傷付けてきた人たちのイジメ返し、カンナがしてあげるの』

カンナのセリフを思い出す。

なぁ、カンナ。お前なのか……?あの録音や写真を母さんに渡したのは。

もう今となっちゃそんなことどうだっていい。

ただ、お前のイジメ返しは成功だ。

サイレン音がアパートの前でぴたりと止んだ。

母さんの手が次第に冷たくなる。

「母さん……」

ギュッと目をつぶり母さんの手を握り締める。

すると、頭の中で美波の声がした。

『もううちら終わりだから。二度とあたしのこと気軽に美波とか名前で呼んだりしないでよ。アンタと付き合ってるなんてマジ恥だし。もう学校来なくていいから。じゃあ』

「ふざけんなよ……ふざけんな……」

俺の6年間を、母さんが必死に稼いだ金を返せ!!!


「うわぁぁあぁあぁああーーーー!!!!」

俺の叫び声はなだれ込んできた警察の怒声によってかきけされた。
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