イジメ返し３

「ねぇ、カンナちゃん。美波ちゃんが言っていたイジメ返しのこと……あれ、嘘だよね？」

教室まで向かう途中、桃ちゃんが尋ねた。

「ごめんね、嘘に決まってるよね。カンナちゃんがそんなことするはずない――」

「――本当だよぉ。カンナ、今まで数えきれないぐらいイジメ返ししてきたもん」

「嘘……、そんな……」

驚愕する桃ちゃんの目を真っすぐ見つめながら答える。

ごめんね、桃ちゃん。カンナはもう昔のカンナじゃないの。

「カンナが直接的にイジメられたわけじゃない時も、イジメられっ子のお手伝いをしたよ」

「どうしてそんなことを……？」

「どうして？そんなの答えは一つしかないよ。桃ちゃんはイジメの被害者と加害者どちらが悪いと思う？」

「それは加害者だけど……」

「そうでしょ～？イジメはイジメる人が悪いの。どんな理由があったとしても人をイジメてはいけない。そんなの分かりきったことだよねぇ。でも、分からないバカな人もいるんだよねぇ」

美波。そして、美波の家族のように。

「イジメを受けた人は心にも体にも傷を負うの。でも、その痛みを加害者は理解できていない。軽々しくした無視や悪口で被害者が心にどれほどの傷を負うのかぜーんぜん分かってないの。やられた方はずっとそんなトラウマに苦しむ。それなのに、加害者はそんな被害者の気持ちなんてお構いなしに楽しくて幸せな生活を送ってる。そんなの理不尽だと思わない～？」

「それはそうかもしれないよ。でも、いつかはその負の連鎖を断ち切らないといけないんだよ。いつかはその行為をゆるさないといけない時が来る。区切りをつけて考えないとずっと同じことが繰り返される」

「ゆるせないよ。カンナは永遠に美波ちゃんと美波ちゃん家族のことを。だって、もうママはいないんだもん。カンナがやらなきゃ誰がママの仇を取ってくれるの？警察も司法も法律もだーれも美波ちゃんを罰しようとしない。ママの苦しみをはらせるのはカンナだけだもん」

いつの間にか教室の前に立っていた。