イジメ返し３
「僕たちはどんな嫌がらせをされても必死に歯を食いしばって我慢を続けたんだ。
何をされても波風立てないように必死になっていた。でも、彼らは容赦なく攻撃してくる。仕方なく警察にも役所にも相談にいったよ。だけど、事件性がなければ警察は動いてくれないし役所にもできることは限られると言われてね……。里子の自殺は……彼らの嫌がらせの証拠を集めようかと家内と話し合っている矢先だったんだ」

鼻をすするおじさん。

「まさか……里子が学校で安西美波にイジメられているなんて思いもしなかった。里子はそんな様子一切僕たちに見せたこともなかったし、毎日元気に登校していたから。あの子の苦しみに僕たちは気付いてあげられなかった。家でも学校でも……どこにいても里子は安西達に苦しめられていたというのに……」

「おじさん……」

声をかけることをためらうぐらい、おじさんは憔悴しきった様子で当時の話をしてくれた。

何年経ってもその痛みや苦しみや悲しみは癒えることなどない。

時間が解決してくれるなどという言葉などあてにはならないことをカンナは良く知っている。

「ねぇ、おじさん。里子ちゃんは優しい子だったんだね。親に心配をかけたくないって思って黙っていたんだね」

カンナの言葉におじさんもおばさんも揃って涙を拭う。

イジメられている子は親にイジメられていることをなかなか打ち明けられないことが多い。

それは親に心配や迷惑をかけたくないと思うから。

自分が辛い立場にいるのにも関わらず、自分以外の愛する誰かのことを常に考えている優しい人。

そんな人がイジメのターゲットにされ、その苦しみに耐えかねてその大切な命を自ら手放す。

そんな理不尽が許されていいはずがない。

「イジメてる奴らがのうのうとした顔で生きているなんて許せないよねぇ。神様が天罰を与えてくれないなら、自分でするしかないね」

カンナの言葉におじさんが顔を持ち上げた。
< 224 / 275 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop