イジメ返し3
安西美波サイド
【安西美波サイド】
「美波、おかえり。ねぇねぇこの間、アパートで襲われた女子高生ってアンタの学校の子なんでしょ?知ってる子?」
学校が終わり家に帰ると、フェイスタオルを首に、バスタオルを体に巻いた母が濡れた髪を一つに束ねながらリビングへやってきた。
母が歩いた部分にポタポタと水滴の後が残る。
「なんで?」
「今日週刊誌の人が来たの。その襲われたっていう子がね、SNSでなんかやらかした子らしくてさぁ。面白おかしく記事にしたいんじゃないの~?で、なんか情報ないかって」
確かにテーブルの上には記者のものと思われる名刺が置いてある。
母は半裸のままドカッとリビングのソファに腰かけて髪を拭く。
ソファのすぐ横には大きなボストンバッグが置かれ、その中には着替えや派手な下着類、それに洗面用具も入っている。
「いいネタがあれば謝礼払うって言ってるからさ。その子のこと知ってるなら教えてよ。お母さん、今月パチンコで大負けして遊びに行くお金なくてさ」
「あたし、その子のこと知らないけど」
知っててもアンタには教えないから。
母に気付かれないように記者の名刺をポケットにしまう。
「本当でしょうね?アンタ、嘘ついてたらただじゃすまないからね」
「うざっ」
疑いの目を向ける母に背中を向けて小声で呟く。
「あっ、そうだ!今日お母さん遅くなるから。もしかしたらお泊りになるかも」
「ふーん。勝手にしたら?」
そのままリビングの扉を勢いよく閉めて階段を上がる。
もしかしたら、じゃないくせに。
しっかり準備までしてシャワーも浴びちゃってよく言うわ。
心の中で悪態をつく。
両親の不倫は今に始まったことではない。
互いに外にパートナーを作り好き勝手に遊ぶ。
どちらから始めたのかは分からないけれど、幼稚園の時には母が父以外の男の人を家に連れ込んでいたのを記憶している。
『美波、絶対に部屋に入ってこないでね?約束よ』
男の人が家に来た日の母はとても優しかった。
でも、あの日あたしはどうしても我慢ならず言いつけを破った。
隣の部屋から母の妙な声が聞こえてきたのだ。
溜息をついているような、泣いているような、笑っているような、叫んでいるような、妙な高い声。
静かになったかと思えば急にその声が大きくなったり、一定のリズムを刻んだり。
男の人が来た日は必ず母は奇妙な声をあげる。
その日はその声がいつまでも絶え間なく続き、耳を塞いでいても隣の部屋まで届く。
その母の声は恐ろしく、背中がぞわぞわした。
一体隣の部屋で何が起きているんだろうか。
それは興味半分、心配半分という気持ちだった。
部屋の扉を開けると、苦悶の表情浮かべる母の上に男性が覆いかぶさっていた。
母と男性を覆うように布団がもぞもぞと動きそれはまるで何か恐ろしい生き物のようだった。
「美波、おかえり。ねぇねぇこの間、アパートで襲われた女子高生ってアンタの学校の子なんでしょ?知ってる子?」
学校が終わり家に帰ると、フェイスタオルを首に、バスタオルを体に巻いた母が濡れた髪を一つに束ねながらリビングへやってきた。
母が歩いた部分にポタポタと水滴の後が残る。
「なんで?」
「今日週刊誌の人が来たの。その襲われたっていう子がね、SNSでなんかやらかした子らしくてさぁ。面白おかしく記事にしたいんじゃないの~?で、なんか情報ないかって」
確かにテーブルの上には記者のものと思われる名刺が置いてある。
母は半裸のままドカッとリビングのソファに腰かけて髪を拭く。
ソファのすぐ横には大きなボストンバッグが置かれ、その中には着替えや派手な下着類、それに洗面用具も入っている。
「いいネタがあれば謝礼払うって言ってるからさ。その子のこと知ってるなら教えてよ。お母さん、今月パチンコで大負けして遊びに行くお金なくてさ」
「あたし、その子のこと知らないけど」
知っててもアンタには教えないから。
母に気付かれないように記者の名刺をポケットにしまう。
「本当でしょうね?アンタ、嘘ついてたらただじゃすまないからね」
「うざっ」
疑いの目を向ける母に背中を向けて小声で呟く。
「あっ、そうだ!今日お母さん遅くなるから。もしかしたらお泊りになるかも」
「ふーん。勝手にしたら?」
そのままリビングの扉を勢いよく閉めて階段を上がる。
もしかしたら、じゃないくせに。
しっかり準備までしてシャワーも浴びちゃってよく言うわ。
心の中で悪態をつく。
両親の不倫は今に始まったことではない。
互いに外にパートナーを作り好き勝手に遊ぶ。
どちらから始めたのかは分からないけれど、幼稚園の時には母が父以外の男の人を家に連れ込んでいたのを記憶している。
『美波、絶対に部屋に入ってこないでね?約束よ』
男の人が家に来た日の母はとても優しかった。
でも、あの日あたしはどうしても我慢ならず言いつけを破った。
隣の部屋から母の妙な声が聞こえてきたのだ。
溜息をついているような、泣いているような、笑っているような、叫んでいるような、妙な高い声。
静かになったかと思えば急にその声が大きくなったり、一定のリズムを刻んだり。
男の人が来た日は必ず母は奇妙な声をあげる。
その日はその声がいつまでも絶え間なく続き、耳を塞いでいても隣の部屋まで届く。
その母の声は恐ろしく、背中がぞわぞわした。
一体隣の部屋で何が起きているんだろうか。
それは興味半分、心配半分という気持ちだった。
部屋の扉を開けると、苦悶の表情浮かべる母の上に男性が覆いかぶさっていた。
母と男性を覆うように布団がもぞもぞと動きそれはまるで何か恐ろしい生き物のようだった。