イジメ返し3
『以前から自宅のゴミを持ってきてうちのゴミ箱に捨ててらっしゃいますよね?持ってこられるのも困るんですが、分別されずに出されていて本当に迷惑してるんです。それと、駐車場のこの部分は障がいのある方専用のスペースなんです。先ほど体の不自由な方がとめられずに苦労しているのを見まして……。度々こちらに車を停められているようなんですが、次からは障がい者専用のスペース以外に駐車して頂けますか?』
店員の言葉を聞き終えると、母が眉間にしわを寄せた。
どうやらお菓子を盗んだことで店員が追いかけてきたわけではないらしい。
幼稚園バッグを握り締めていた手から力が抜ける。
『あのね、私はこのスーパーをひいきして毎日のように買い物に来ているの。そんな太い客にもう買い物に来るなって言いたいわけ?』
『いえ、そうではなくて家庭ゴミを捨てることと、障がい者用の駐車スペースに車を停めないでほしいということを言いたいんです』
『家庭ゴミを持ってきちゃいけないなんてお店に書いてあった?』
『はい。ゴミ箱の近くに大きく記載してあります』
『ふーん。でも、ゴミを持ってきているのはうちだけ?』
『いえ、それは……。でも、ダメなものはダメなので』
『だよね?うちだけじゃないよね?うちにいうならゴミ捨ててる全員に言ってよね?そうしないと不公平じゃない?なんでうちだけ言われるのよ』
『ハァ……』
『それにね、障がい者スペースに車を停めてっていうけど、障がいがあればマークなんてつけなくたって車を停める権利があるの。私だって障がいがあるのよ。目には見えない内臓疾患だけど。それをあなたはとやかく言うの?』
『ですが……』
『じゃあ、いいわよ。ちゃーんっと診断書とってもってくるから。ねっ、だからお金。あなたが言い出したんだから、あなたが払ってよ。今から一緒に病院に行きます?』
『いえ、それは……』
『人を疑ったんだから、何か言うことあるでしょ!?』
『申し訳……ありません……』
グッと唇を噛みしめる店員。
『えっと、あなたの名前は最上さんね。今日、本社にクレーム言っておくわね』
『そ、そんな……!』
『美波、行くよ』
母はそう言うと、颯爽と車に乗り込んだ。
『ママ、病気なの……?』
車がゆっくりと発進する。
『どうして?健康そのものだけど』
『だって……』
内臓疾患って言ってたじゃない。
『ああ、さっきの?あんなの嘘も方便よ。ホント、ムカつく男。ざまーみろ!』
あははははと笑う母。助手席のサイドミラーから先程の店員の姿が確認できた。
肩を落としてうつむく若い男性。
正義感の為に母を注意した男性の行く末は母が握っている。
『美波、ああはなっちゃダメよ?お母さんみたいにうまく立ち回らないと。それにね、やられっぱなしで黙ってちゃ絶対にダメよ!』
母の言葉に大きくうなずく。
そして、幼稚園バッグから取り出したお菓子を取り出し、袋を破いた。
それを一口食べると、何かが自分の中でパチンっと弾けた。
そうだ。うまく立ち回れる人間が得をして、うまく立ち回れない人間が損をする。
正義感を丸出しにしたところで何も得るものなどない。
あたしはこの時、そう悟った。
店員の言葉を聞き終えると、母が眉間にしわを寄せた。
どうやらお菓子を盗んだことで店員が追いかけてきたわけではないらしい。
幼稚園バッグを握り締めていた手から力が抜ける。
『あのね、私はこのスーパーをひいきして毎日のように買い物に来ているの。そんな太い客にもう買い物に来るなって言いたいわけ?』
『いえ、そうではなくて家庭ゴミを捨てることと、障がい者用の駐車スペースに車を停めないでほしいということを言いたいんです』
『家庭ゴミを持ってきちゃいけないなんてお店に書いてあった?』
『はい。ゴミ箱の近くに大きく記載してあります』
『ふーん。でも、ゴミを持ってきているのはうちだけ?』
『いえ、それは……。でも、ダメなものはダメなので』
『だよね?うちだけじゃないよね?うちにいうならゴミ捨ててる全員に言ってよね?そうしないと不公平じゃない?なんでうちだけ言われるのよ』
『ハァ……』
『それにね、障がい者スペースに車を停めてっていうけど、障がいがあればマークなんてつけなくたって車を停める権利があるの。私だって障がいがあるのよ。目には見えない内臓疾患だけど。それをあなたはとやかく言うの?』
『ですが……』
『じゃあ、いいわよ。ちゃーんっと診断書とってもってくるから。ねっ、だからお金。あなたが言い出したんだから、あなたが払ってよ。今から一緒に病院に行きます?』
『いえ、それは……』
『人を疑ったんだから、何か言うことあるでしょ!?』
『申し訳……ありません……』
グッと唇を噛みしめる店員。
『えっと、あなたの名前は最上さんね。今日、本社にクレーム言っておくわね』
『そ、そんな……!』
『美波、行くよ』
母はそう言うと、颯爽と車に乗り込んだ。
『ママ、病気なの……?』
車がゆっくりと発進する。
『どうして?健康そのものだけど』
『だって……』
内臓疾患って言ってたじゃない。
『ああ、さっきの?あんなの嘘も方便よ。ホント、ムカつく男。ざまーみろ!』
あははははと笑う母。助手席のサイドミラーから先程の店員の姿が確認できた。
肩を落としてうつむく若い男性。
正義感の為に母を注意した男性の行く末は母が握っている。
『美波、ああはなっちゃダメよ?お母さんみたいにうまく立ち回らないと。それにね、やられっぱなしで黙ってちゃ絶対にダメよ!』
母の言葉に大きくうなずく。
そして、幼稚園バッグから取り出したお菓子を取り出し、袋を破いた。
それを一口食べると、何かが自分の中でパチンっと弾けた。
そうだ。うまく立ち回れる人間が得をして、うまく立ち回れない人間が損をする。
正義感を丸出しにしたところで何も得るものなどない。
あたしはこの時、そう悟った。