イジメ返し3
「人の弱みを握ってそれをネタに相手をゆすって。強い者には媚びを売って弱い者は虫けらのように扱う。最低最悪極悪非道。二人にはそんな言葉がぴったりだね~。ねぇ、本当に美波ちゃんの爪を剥がしちゃってもいいの~?」

「うぅ……ううう……う!」

「うぅ!うぅう!!」

血走った眼をカンナに向けてまるで早くやれとでも言わんばかりに必死にアピール合戦を繰り広げる両親の姿に胸の奥底に閉じ込めて鍵をかけてきた感情が蘇ってくる。

「自分が助かるためになら娘が傷付こうが関係ないっていうこと~?ホント救いようのないおバカさんたちだねぇ。二人の責任は重たいよぉ~?」

カンナはそう言うと、両親のボロボロになった足を何度も何度も執拗に踏みつけた。

そのたびに顔を歪めてくぐもった悲鳴を上げる両親。

カンナは二人の口元のガムテープを剥がした。

二人の口元は真っ赤に染まり、口をパクパクと開けていてもうまく言葉になっていない。

舌を抜いたというのは本当なのかもしれない。

背筋がスーッと冷たくなる。

これはお遊びではない。本気だ。

アイツらは本気であたし達家族を殺そうとしているのかもしれない。

言葉にはならない恐怖が全身に沸き上がり、鳥肌が立つ。

「ママのお葬式の時、幼稚園のママに葬儀に参加しないように連絡をしたんでしょ~?カンナ知ってるんだから」

カンナはそう言うと、母の顔面をペンチで叩いた。

その拍子に歯が折れ、床に転がる。

「ママに土下座させたよねぇ~?」

嫌がって首を左右に振って抵抗する父の頭を押さえて血まみれの口にペンチを突っ込むと、カンナは何の躊躇もなく父の前歯を掴み何度も引っ張った。

「うぁあああーーーーーー!!」

悲鳴をあげる父。

「歯って意外と丈夫なんだねぇ。大丈夫。次こそちゃーんっと抜いてあげるから。麻酔がないからすっごーく痛いと思うけどしょうがないよねっ!」

カンナはにこりと笑うと、ペンチを両手で押さえて体全体で力をかけた。

父の絶叫と床に滴る鮮血。床に転がる前歯。

呼吸が荒くなり、口の中がカラカラに乾く。

ひとしきり両親を痛めつけた後、

「あとは里子ちゃんのパパとママに任せるねぇ。煮るなり焼くなりお好きにどうぞ!あっ、でも殺しちゃダメだよぉ~?すぐに殺したら面白くないしねっ!」

ペンチを持ったカンナはあたしの方を向きにこりと笑った。
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