イジメ返し3
「……そうだよ。全部、アンタの言う通りだから。あたしは誰にも愛されずに育った。愛し方も愛され方もわかんないのよ!!アンタたちが憎かった。あたしのもっていないものを全部持っているアンタたちが。笑顔で抱きしめられているアンタたちが……!!だから、全部奪ってやるって決めたの」

「ようやく自分と向き合ったねぇ。でも、もう遅いの。これ、見て~?」

すると、カンナはポケットから取り出したスマホをあたしにかざした。

「なにそれ……」

「翔平くんってばよっぽど美波ちゃんのことが許せなかったんだろうねぇ。こんな動画流しまくってるよ~!」

あたしと翔平の情事が動画に収められていた。

聞き覚えのある自分の声が鼓膜を震わせる。

「どうして……やだ……そんな……!」

翔平側から撮っているせいで、あたしの顔や体は全てレンズに収められている。

羞恥心と絶望が一気に体中に押し寄せる。

「翔平くん、今どこにいるんだろうねぇ~!元気かなぁ?どこにいたって美波ちゃんにやり返せる方法、考え付いたんだねぇ。あっ、そうそう。それとねぇ、中学校の時の里子ちゃんへのイジメをどうして里子ちゃんの両親が知ってたと思う~?」

言われてみれば確かにおかしい。体育館倉庫でしたイジメの内容を里子の両親は再現するかのようにあたしへし返してきた。

「まさか……砂羽が!?」

砂羽はあの時、スマホで動画を撮っていた。

「大正解!スマホの動画をDVDに焼いて里子ちゃんのおうちのポストに投函したの。砂羽ちゃんの美波ちゃんへの執念もなかなかだねぇ。美波ちゃんってば周りに敵が多すぎるよぉ~!まっ、それも日ごろの行いのせいだけどっ!」

歯を食いしばる。まさか翔平と砂羽があたしをハメようとするなんて。

「チッ、アイツら……」

「ほらっ、そうやって自分の非を人のせいにするところが美波ちゃんのダメなところ。ここまでされても更生しないなんて本当に困った子だね」

「っ……」

「翔平君や砂羽ちゃんが困ってるとき、美波ちゃんは助けようとした?してないよねぇ。必要がなくなるとさっさと切り捨てて見切りをつける。そんな人を慕ってくれる人なんているわけないでしょ~?」


カンナがそう言ったと同時に、【ピンポーン】と玄関のチャイムが鳴った。

「あらぁ~、こんな時に……誰だろう……?いい子にここで待っててねぇ~?」

カンナはそう言うと、あたし達に背中を向けて玄関から出て行った。
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