イジメ返し3
「美波ちゃん……また桃ちゃんをイジメようとしてたんだねぇ。ぜーんぶ聞いたの」

「桃……アンタ……裏切ったの!?」

桃を睨み付けるあたしをカンナがさげすんだような目で見つめる。

「裏切った?そもそも桃ちゃんと美波ちゃんは仲間ですらないでしょ?桃ちゃんの裸の写真を撮って脅してたのカンナ知ってるんだから」

「くっ……!」

カンナが転校してからすぐ、あたしは桃の家に押しかけて無理矢理桃の裸の写真を撮影した。

そして度々連絡を取り、それをネタにゆすりをかけた。

それがカンナのイジメ返しに抵抗する切り札になると思ったから。

カンナが桃のことを大切に思っていることを知っていたから。

桃にだって相当な圧力をかけておいた。

もしもカンナと勝手に連絡を取り合ったりすることがあれば、容赦なくカンナを攻撃すると。

カンナの家族も桃の家族にも危害を加えると忠告したはずなのに。

それなのにどうしてあたしを裏切ったの……!?



「私はもう、美波ちゃんに負けないって決めたの。カンナちゃんの為に」

「……は?」

桃の手はプルプルと小刻みに震えている。

「カンナちゃんは幼稚園時代……どんなことがあっても私のことを助けて守ってくれた。だから今度は私が……カンナちゃんに手を貸す番なの。カンナちゃんの望みを叶える為には私は……なんだってするよ」

桃の言葉にカンナは微笑む。

「美波ちゃんが余裕こいていられたのもこの家に桃ちゃんがくるって分かってたからでしょ~?でも、残念だったねぇ。もう助けはこないよぉ~?」

「そんな……」

絶望したと同時にふと、腕のロープが解けたことを思い出した。

チラリと床に転がるペンチに目をやる。

手を伸ばせば届くかもしれない。やり返すなら今しかない。

こいつら全員絶対に許さない。

3、2、……頭の中で数えながらタイミングを計る。

1の時、手を伸ばすと、目の前でペンチが蹴飛ばされた。

「残念でした~!希望を奪われた気分はどう~?」

その言葉と同時に、あたしは頭部を蹴飛ばされて意識を失った。




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