イジメ返し3
クラス内で二人は圧倒的な権力を持っていた。

クラスの中にはイジメまではいかなくても二人に明らかに見下されているクラスメイトが数人いる。

その子達は大人しく見た目も地味で思ったことを口にしない。

『アンタってすべてがダサいよね。もう少しまともにできないわけ?』

美波の機嫌が悪い時には晒しあげのようにクラスメイト達の前で罵られる。

『えっ……、そ、そうかな……』

何かを言われても、言い返すことはせず自己防衛のために引きつった笑みを浮かべるだけ。

この狭い教室の中では図々しくて発言力のある人が上、

言いたいことを言えずに我慢して黙っている大人しい人が下だ。

そんな暗黙の了解が存在する。

もちろん、それを大多数の人間は理解し自分がスクールカーストの下位にならないように誰かを蹴落とそうとする。

誰だって自分が一番可愛い。傷付きたくない。

だから、誰も口にしない。

バカみたいだ。そんなの間違っている。

そんなことを口にすれば最後、自分がイジメられる側になるかもしれない。

『アンタがいなくなれば、教室中が平和になるのに』

何気なく放ったその一言がどんなに相手を苦しめ、傷付け、痛めつけているのか美波は分かっていない。

心に負った傷は目に見えない分理解されずらい。

どんな痛みか、どんな深さか、いつ治るのか。

簡単にはなったその一言は、誰かを死においやる可能性だってある。
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