イジメ返し3
「なんかあまりにも可哀想だから、そろそろ返してあげるわ」

美波はそう言うと、ポケットの中から一枚の写真を取り出した。

ママとカンナが笑顔で映る写真。

ママが自殺してからパパはママの写真をどこかへ隠してしまった。

カンナがママを思い出して辛くないように考えてのことだろう。

でも、そんな配慮などいらなかった。

何度頼んでもパパはママの写真をカンナに渡してくれない。

学生手帳に挟んでいたあの写真だって、パパが片づけ忘れたカンナの部屋の写真立てに飾ってあった唯一の写真だ。

あの写真はママそのものだ。

だから、いつも身に着けていた。

ママのそばにいられるように。ママを感じられるように。

お財布に入れておけば、落としたり盗まれたりする可能性もある。

学生手帳にはその心配はないと踏んでいた。

もし無くしたとしても、拾った人にはそんなもの何の価値もないだろうし、落とし物としてしかるべき場所に届けてくれるはずだ。

それなのに、うかつだった。まさか美波の手に渡るなんて。

もう学校へもっていくのはやめよう。

誰にも触れられないカンナの部屋のどこかに鍵をかけてかくしておこう。
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