イジメ返し3
「うん。返して」

手を差し出したカンナの前で、

「なんてね。素直に返してもらえるとか甘いこと考えてた?」

美波は一思いに写真を引き裂いた。

「――!!!」

声を出すことはおろか、目を動かすこともできなかった。

まるでスローモーションのように、美波の手の中にある写真が更に細かく引き裂かれていく。

「あっ、ごめ~ん!手が勝手に動いちゃったわ」

美波はそのまま何のためらいもなく炭の中に写真を落とした。

散らばるように落ちていったママの写真は炭に焼かれていく。

「あっ、あっ……」

喉の奥が引きつれたように声を出すことができない。

ガタガタと体中が震え必死にコンロに手を伸ばす。

ママが、燃えている。

燃やされている。

焦げ臭い匂いがする。

ママの顔が真っ黒になり、縮こまる。

「ママ、ママ――!!」

絶叫しながらコンロに手を伸ばす。

あまりの熱さに右手の指先がひどく痛み、思わず手を引っ込める。

ママの写真はもうただの塵と化していた。

真っ黒のすすにまみれた灰だ。

ママが燃えてしまった。ママが……。

「あーあ、全部燃えちゃった。でも、これでよかったんじゃない?いつまでも死んだママのこと引きずってる人生って空しいし。あたしに感謝してよね。アンタのママへの未練を断ち切ってあげたんだから」

まるで良いことをしてやったというような態度の美波。

カンナは力なくへなへなと地面に崩れ落ちた。
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