敏腕メイドと秘密の契約
「今日、発表するプレゼン用のパソコンがクラッキングされた」

クラッキングとは、コンピューターネットワークに繋がれたシステムに不法に侵入したり、コンピューターシステムを破壊したり改竄するなど、コンピューターを不正に利用すること(Wikipediaより)。

藍は、セッティングされていたコンピューターを覗くとコントロールパネルを起動させようとした。

「このコンピュータ自体が、ルートクラックされてますね。再起動をかけたら2度と動かなくなる可能性があります。問題を解決するにはとても時間が足りません」

ルートクラックとは、"ルート"と呼ばれる"システム管理ユーザー"のアカウントで侵入し、情報管理の改竄、盗難、破壊を行ったり、異常動作を起こさせることである。

「ただ、"侵入時間が今日ではない"ことから考えてもパソコン自体をすり替えた可能性があります」

藍は、パソコン画面から目を離さずに続けた。

「天音さん、当然、今回のプレゼンのためのバックアップはとってますよね?」

「ああ、だが、このコンピューターだけでなく、周辺機器も正常作動が出来なくなっている可能性があるな。」

天音の会社は、システムエンジニア業界の日本最大大手だから、当然自社の製品を準備することは可能だ。

天音は頷くと、急いで会社に残っている"叔父で専務"の忠志に連絡を取った。

天音が事情を説明すると『こうなることを危惧していた』と専務は言い、バックアップしていたものと周辺機器をすぐに持参すると行った。

クラッキングを予測していたとはいえ、コンピューターを破壊したものとまるまるすり替えるとは思わなかった。

やはり、内部の犯行だろうか。

今朝、持参予定のパソコンで最終確認をしたときには異常動作は起こさなかった。会社のシステムに不法侵入すればハザードが鳴るように設定もしてある。

今はいくら考えていてもきりがない。まずは、目先のことを切り抜けなければ。

天音は、BGの三浦雄貴を呼び戻し、ステージ裏のパソコン操作室を完全閉鎖した。

もちろん、ただの秘書である"木村"がパソコンを操作していることが外部に漏れないように配慮する。

パーティ開始まで後3時間に迫っていた。
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