敏腕メイドと秘密の契約
「ジョン、日本語で話しなよ」

天才ジョンも当然バイリンガルらしい。

「天音、私はジョンといいます。この度はおめでとう。僕のプレゼント気に入ってくれたみたいだね。」

意味のわからない祝福の言葉に藍も天音も怪訝な顔をする。

「まさか、機密漏洩も今回のトラブルもみんな嘘だっていうんじゃないだろうな?」

天音が叔父で専務の忠志に詰め寄った。

「いやいや機密漏洩はほんとだよ。ほとんど解決してたけどね」

その言葉に藍も天音も目を見開いた。

「藍は天才だけど、人として満たされないものが一つだけあった。それを私もジュリアもマリアもずっと心配してたんだ」

ジョンは、向かい合わせになって藍の両手を握り微笑んで言った。もちろん天音はそれを引き離そうとする。

「アメリカでの藍は、言い寄ってくる男には目もくれず、コンピューターと研究に没頭する毎日。"私が誰かと付き合っても相手を壊すだけだから"と言って,,,。」

うつむく藍を天音が抱き寄せた。

「藍ちゃんは中学時代の天音が、体を壊しそうになるまで勉強に没頭している様子に心を痛めていた。だから離れようとアメリカに渡ったんだ」

忠志は親友の三浦夫妻からその話を聞いていたらしい。藍の気持ちを尊重して、これまで藍の居場所を天音には教えないでいたと語った。

「一方の天音も、高校、大学と首席をとるようになっても何の感情も表さない機械みたいな人間になってしまった。就職してからも、四六時中考えているのは中学時代のライバル"藍ちゃん"のことだけだ」

忠志は苦笑しながら続けた。

「藍ちゃんの両親と天音の両親、ジョンと話し合って、25歳になっても、2人がお互いを忘れられないようなら引き合わせようと決めていたんだ」

「藍は、天音のことが好きすぎて、他の人を好きになることにも臆病になってたんだよ。だから、それを治せるのは天音だけだと思ってね。今回の話に乗ったんだ」

そう言って、ジョンは天音にウインクをした。

「素直じゃない2人でも、疲れさせれて二人きりにしてしまえばうまくいくと確信していたわ」

藍の母ありさも嬉しそうに言った。

「なんせ"疲れると抱きつき魔"の藍と"寝起きキス魔"の天音くんだからね」

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