イジワルな彼は私を溺愛しています ②
「「「Happy Birthday !!」」」
発音のいい声とクラッカーが飛んできた。
「……え?」
私は驚きで固まった。
「何ぼーっとしてるの。早くこっちに来なさい」
母がフリーズしている私を手招きする。
和海が後ろにいることを確認して、私は部屋に入った。
中は机がいくつか並んでいて、沢山の人がいた。
全員がこっちを見ている気がする。
もう少し準備に時間をかけてくれば良かった。ドレスを着ただけで、髪のセットも化粧もしていない。
「今日は有紀の誕生日なのか?」
和海が後ろからこっそり聞いてきた。
「……そう言えば。誕生日は今日だ」
誕生日……最近文化祭で忙しかったから忘れていた。
「どうしてそんな大事な事言わない」
「忘れたの」
和海がそっとため息をついたのが分かる。
「有紀、こっちよ」
母が言った。
母の隣には父と兄がいる。
私は母達の方に行った。
「お父さんこれは?」
「有紀の誕生日パーティーだ。会社の奴を呼んだんだ。挨拶してこい」
「いきなり挨拶なの?」
「ああ、和海くんも行くといい」
「わかりました」
和海は頭を少し下げて言った。
「ちょっと、私挨拶なんてしたことない」
「和海くんに教わりなさい」
父はそう言って、隣の机に行ってしまった。
母もそこについて行く。
「有紀も大変だな」
兄もそう言いながら会社の知り合いの方に行ってしまう。
「え……」
これ私の誕生日パーティーなのに、私置いていかれましたけど?
「有紀、行くぞ。挨拶は偉い人からすると決まっている」
「でも私社長と副社長しか知らないし」
私は「お父さんと兄さんだけど」と言って周りを見た。
男性はスーツに高級そうな腕時計。女性はドレスに宝石が輝くアクセサリー。こんな人が集まっている誕生日パーティーなんてあっただろうか。
これじゃあ、社交パーティーだろうが。
「はあ」
小さくため息をついて、机に乗った料理を見た。食べようかと思ったが、誰も手をつけていないので、手を引っこめた。