イジワルな彼は私を溺愛しています ②
「腹でも空いたのか?」
「まあね。美味しそうだし…」
高級ホテルとあって、料理からは食欲をそそる香りがする。
「有紀さん、こんばんは。はじめまして。私は専務の近藤です」
私の前に白髪の上品そうなおじいさんが現れた。
「こちらこそはじめまして。私は水沢有紀です」
専務、つまりお偉いさんだ。
私は礼をした。
「お綺麗なお嬢さんだ。宜しければ、私がお手伝い致しましょうか」
主語が抜けていたが、挨拶の事を言っていることは分かった。
誰が偉いのか分からない私にとっては思ってもみなかった有難い申し入れだ。
「お願いします」
「はい。そちらの方は?」
近藤さんは和海を見て言った。
「あ、私の彼氏の中島和海です」
「中島和海と申します。よろしくお願いします」
和海は神妙に頭を下げた。
「中島和海……君は中島家の御曹司かね?」
「はい。私の事を存じ上げているとは驚きです」
和海が目を丸くしながら言った。
「この業界では君は有名人だからね。若くして会社を立ち上げ、経営がとても上手いと聞いた事があるよ」
「身に余る光栄です」
和海が緊張しているのがなんとなく分かった。
「では、行こうか」
近藤さんはおじいさんとは思えないしっかりとした足取りで歩いていった。