イジワルな彼は私を溺愛しています ②

3日目

「嫌だ」

私はポテトサラダを口に入れながら言った。

「……どうしてだ」

父は意外だったのか、間をあけて言った。

「何で私がそんな面倒臭い事しなくちゃいけないの？」

「「面倒臭い？」」

父と母の声がはもった。

そんなに驚く事じゃないだろう。

私は面倒臭い事は嫌いな性格だ。

負けず嫌いとは対照的だと自分でも自覚はしているが。

＿＿今朝。すなわち、文化祭最終日。

私は朝、和海、母、父と一緒に朝食バイキングを食べていた。

ただ単に母に誘われたのだが、父が「有紀、会社を作ってみないか？」といきなり話した所からこの会話が始まった。

「だって、面倒臭いでしょ。しかも、私はピンピンの女子高生。青春真っ盛り。どうして働かなくちゃいけないの」

私はオムレツをフォークで刺しながら言った。

「それはだな、有紀がmizusawaグループの令嬢として色んな事を経験しておくべきだと思ったからだ」

「社会人になってからでいいでしょ」

私はオムレツを口の中に押し込んだ。

「社会人になったら、有紀は和海くんと家庭を持って、子供を授かって、色々と大変だろう」

和海との家庭……。

「っ／／」

想像して、少し恥ずかしくなった。

「だから、高校生のうちにやっといてもらいたい。それに、会社を経営するのも達成感があって楽しいぞ」

達成感なんて言われても、

「やりたくない」

漫画を読む時間が減るというだけで私はやりたくないのだ。

「有紀、少しは前向きに考えてくれてもいいじゃないの」

母は父の助け舟を出した。

「前向きに考える理由がないでしょ」

私の答えは考える事なくノーだ。

「やりたくないものはやらない。単純な高校生の考え方」

「有紀」

父の声色が変わった。

「やりなさい」

「やりません」

和海に慣れている私にとって父の真剣な声なんてこれっぽっちも怖くない。