イジワルな彼は私を溺愛しています ②
本屋。そこは有紀が我を忘れる場所。

有紀は興奮気味にBL漫画を手に取っている。

俺は有紀の事を見ている奴がいないか目を光らせる。

……いた。
本棚に隠れてちらちら有紀を見ているハゲのおっさん。

俺はさりげなくおっさんの視界を遮る位置に立つ。

「ちっ」

舌打ちの音が聞こえた。

そしておっさんが去っていく足音も。

有紀を見てみるが、案の定何にも気づいていない。この警戒心の無さに俺がどれだけヒヤヒヤさせられてるか。

「これと……あ、これもあるし……新刊出てる……このシリーズ知らないな……」

しばらくして、有紀は何冊か漫画を手に持って俺を見た。

「いいのか?」

「後は、経営学の本だけ」

有紀は上機嫌に歩いていく。

俺はそんな有紀についていく。

「和海、どれがいいと思う?」

「こんなんでいいんじゃないか?」

俺が渡したのはイラストが多くて分かりやすそうな本。

「じゃこれにする」

有紀はそれも抱えて会計に向かう。

積み上げられた漫画のせいで腕が震えている。

俺は有紀の本を半分持とうとしたら、有紀の前から手が伸びてきて、俺が伸ばした手は空振りした。

「ありがとうございます」

有紀は本を持っているスーツ姿の女に言った。
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