イジワルな彼は私を溺愛しています ②
「父の書斎の場所を教えてほしいのですが」

「わ、私なんかに敬語を使わないで下さい。えっと、旦那様の書斎でしたらここをまっすぐ行って、2つ目の角を右に曲がって、それから3つ目の角を左に曲がった所にある階段を登って……」

覚えられない。

「案内してもらっていいですか?」

「で、でも私今からシーツを交換しないといけなくて……。あ、でもお嬢様に失礼がある方がいけないのかな……」

メイドは1人でぶつくさ言っている。

「私の我がままに巻き込まれたってメイド長に言っとくから、案内してもらっていい?」

私はタメ口で少し強めに言った。

「わ、分かりました」

メイドはおどおどしながらも私の前を歩いていく。

「名前を教えてほしい」

「わ、私の名前ですか」

あなた以外誰がいるんだよ。

もちろんそんなことは言わないが。

「そう。メイド長に伝えるのに必要だから」

「は、はい。小笠原芽衣です」

「分かった。私は水沢有紀です」

「存じ上げていますっ」

メイド__芽衣はぎこちない動きで階段を登っていく。
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