イジワルな彼は私を溺愛しています ②
「和海くんも聞いてくれ」

空気を読んで出ていこうとした和海を父が呼び止めた。

和海は私の隣に座る。

「さっそくだが本題に入る。この報告書の事だが」

父が持っているのは私が昨日渡した資料だった。

「明らかにおかしい点が2つある。1つは人件費だ。低すぎる。しかし、一人あたりの給料は中々の金額だ。つまり、雇う人が少ない。というか少な過ぎる」

「もう1つは成長速度だ。始めて4ヶ月しか経っていないというのに全国に10店舗は前代未聞だ」

「嘘は書いてないけど」

正直どうでもいいはなしだ。

そんなの出来ちゃったんだからしょうがない。

「それならどうやった?人数も少ないのにこんな短期間で会社を大きくする方法があるのか?」

「出来ちゃったんだからいいでしょ」

「良くない。と言ってもだいたい予想はつくがな」

なら早く言えばいいのに。

父は椅子に寄りかかっていた背を起こした。

「萩原さんだろ」

「その通り。萩原さんは凄いよ。頼んだ事はすぐやってくれるから」

「有紀は仕事してないだろ」

「したよ。それなりに」

「そうか?全て萩原さんに任せたんじゃないか?」

「そういうのは後日萩原さんがいる所で話した方がいいと思いますよ」

和海が口をはさんだ。

「そうだね。はい、お父さんはまた後でね」

私は強引に父を部屋から閉め出した。
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