イジワルな彼は私を溺愛しています ②

2月13日。

「どうぞ、義理チョコです」

昼休み、私は生徒会役員のクラスに顔を出してチョコを渡していた。

渡す時に私のファンクラブであろう人達も欲しそうにしているので沢山作りすぎたやつ(失敗作も含む)を渡す。

「これ皆に配ってるの?」

翔先輩は私が渡したチョコクッキーをもらいながら言った。

「そうですよ。日頃お世話になっている人にあげるものですから」

「……カズは知ってるの?」

「今日の朝……不思議な顔をしてました」

いや、不思議というよりは微妙な顔と表現する方が正しいだろう。



今朝。

「これなんだ?」

和海がエレベーターに乗っている時、私が持っている大きなカバンを指して言った。

「義理チョコ」

「……なんだそれは」

和海は明らかに不機嫌になった。

しかし、ここは淡々とした方が地雷を踏まずに済む。

「日頃お世話になっている人にあげるもの。昨日社員にも渡してきた。大変だったよ、クッキー生地作りすぎて腕が筋肉痛だし」

和海の眉がピクリと動く。

「あー、それとどうしてバレンタイン前に渡すのか萩原さんに聞かれた」

エレベーターという密室空間に不穏な空気が漂いはじめ、私は独り話し続ける。

「それはバレンタインデーは和海の誕生日パーティーで忙しいし和海のチョコも作らないといけないからって言ったら、萩原さんがアドバイスしてくれたんだけど、自分をリボンで縛るってどうなの?聞いた時ドン引きしたんだけど。そんなの淫乱ですって言ってるようなものでしょ」

ここでちらっとエレベーターの階数表示を見るが10階だった。

「あ、それと和海って甘いもの食べれる?食べれないならビターチョコにしようと思ってるんだけど。ホワイトチョコは私はあんまり好きじゃないから使わないつもりだけど好きだったりする?あと、チョコペン失敗したらごめんね。お菓子作りはしたことないから難しいんだよね」

チン

待っていた瞬間。エレベーターが1階に着いた。

私は和海を見ると、なんとも言えない微妙な顔をしていた。


次は渡辺先輩のクラスに行く。

「俺、沙知から貰うから」

「あー、そうですね。すいません」

差し出していたクッキーをカバンにしまう。

「ところで、カズは怒らなかった?」

私は今朝あった事を話した。

「それは微妙な顔になるな」

「どうしてですか?」

「それは直接カズに聞いて」

「わかりました」

予鈴がなって、急いで自分の教室に向かった。
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