イジワルな彼は私を溺愛しています ②
チン

電子レンジが鳴った。

その音で俺が少し目を離した隙に有紀は俺の下から抜け出して台所に向かった。

「有紀」

いつもよりも低い声が出た。

「ご飯が終わったら……い、いいから」

「今がいい」

「で、でもお肉焼けたし………」

有紀は電子レンジから肉を出した。

香辛料のいい香りが鼻をかすめる。

「……分かった。その代わり今日は寝させないからな」

俺はダイニングテーブルに座る。

有紀はほっとしたように息を吐いてパタパタとスリッパの音をさせながら、テーブルに料理を並べていく。その姿も色っぽく今すぐ襲いたいが、我慢だ。

メインの牛肉にポテトサラダ。モッツァレラチーズとトマトにオリーブオイルをかけた前菜。それとスープとパン。

どれも手間がかけてある。

俺のために頑張ってくれたんだと分かって笑みがこぼれる。

「乾杯しよう」

有紀はワイングラスに麦茶を注いで俺に渡した。

こういうのは雰囲気が大切なのだろう。

「誕生日おめでとう」

「ありがとう」

料理は全て美味しかった。

有紀にそう伝えると、照れ笑いをした。

上手くできるか心配だったらしい。

心配する必要がないほどに美味しかったが。

「次はデザートね」

有紀は皿を片付け始める。

台所を見ると有紀に見るなと言われた。
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