イジワルな彼は私を溺愛しています ②
「はぁ」
私はスカートに履き替えてから、校舎の中をふらふらと歩いている。
和海のクラスに行ってみたが和海はいなかった。
手ぶらで生徒会室から出てしまった私はスマホを持っていないから電話をかけることもできない。
つまり、行くあてのない私はふらふらと歩くことしかできないわけだ。
暑い……。
9月に入ったといって暑さがいきなり消えてくれるわけがない。
もう、溶けそう。
和海がいなくならなければこんなことにならなかったのに。
「和海……」
ぼそっとつぶやく。
「有紀ちゃん?」
一階の人通りの少ない廊下を歩いていると後ろから声をかけられた。
驚いて振り向く。
「やっぱり有紀ちゃんだ!」
何故か私を見て天にものぼる勢いで喜んでいる。
「あ、あの」
「ああ、本当に生きててよかった……」
感激しているのだろうか。
「すいません。あの」
名前を聞こうとしたら、
「ぼ、僕は」
また遮られた。