イジワルな彼は私を溺愛しています ②
「………………有紀」

恐ろしい声で呼ばれた。

「なんでしょうか……」

「客寄せ係はキャンセルしろ」

「でも、OKしちゃった……」

「そうしないと俺は見に行かんとでも言って説得しろ」

「分かった」

それなら絶対説得できる自身があった。

「それでも無理なものは無理ですよー。会長は当日来賓の方に挨拶したり、各クラスの展示発表を見たり、色んな発表のゲストをしたり、やることがいっぱいなんですよー」

だんだん和海が可哀想になってくる。こんなことをする会長にはなりたくない。

「チッ、会長なんてならなければよかった」

「カズが頭良すぎるのが悪いな」

「周りが馬鹿なのが悪い」

「あの」

ちょっと気になるワードが出てきたから、小さな声を挟んだ。

「なんだ?」

「生徒会役員ってどう選ばれるんですか?」

「会長の指名かな。会長は文化祭実行委員長も決められるし」

加賀田先輩が言った。

「会長は二年間の定期テストで一位を一番多くとった人が強制的にさせられる」

渡辺先輩が残酷なことを言った。

「あぁ」

私は今までの二回のテストで一位をとってしまった。

「水沢さんは会長やりたくないの?」

「はい」

「そっかー」

川谷先輩はクスクスと笑っている。

「カズは知らなかったもんな。先生から言われた時の暴れようは凄かったな」

渡辺先輩は苦笑しながら言った。

「正樹は居合わせたのか。不運だったな」

早見先輩はぼそっとつぶやくように言った。

「ああ。最高に不運だった」

「……仕事」

初めて山口先輩の声を聞いた。

皆珍しいものを見るように山口先輩を見る。

「あ、あ、そうだね。うん」

加賀田先輩はあはははと笑いながら自分のデスクに戻った。

加賀田先輩が動いたのを見て、皆金縛りが解けたように動き出した。

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