イジワルな彼は私を溺愛しています ②
私はトイレに行ってくると和海に言ってカメラの前から逃げた。

トイレに入ってふーっと息をはいた。

息がつまりそうだった。

私は和海と歩いていて可笑しくないだろうか。カメラの前でずっとそんな事を考えてしまっていた。

鏡を見る。

もっと顔が小さかったらいいのに。
もっと身長が高くて、スタイルが良かったらいいのに。

所詮、無いものねだりにすぎない。

はぁ。

このまま和海を放って教室に行こうかな。

キィ

トイレのドアが開いた。

私は急いで鏡から離れて、トイレから出た。

「水沢さんですよね?」

トイレの前で待ち伏せされていたのか、いきなり黒縁メガネをかけた女子生徒に声をかけられた。

腕には新聞委員会の腕章がある。

「そうですけど……」

「お話を伺ってもよろしいですか?」

「…はい」

頭の中にちらっと和海が浮かんだが、少しくらいいいだろう。

私はトイレの前からどいて、彼女と向かい合った。

「会長と付き合っていると聞きましたが、本当ですか?」

私なんかと付き合うなんて信じられないのだろうか。

「一応…」

「そうですか。本当にお似合いの2人ですよね」

「ありがとうございます」

お似合いか…。

そう思ってくれている人はどのくらいいるんだか。

「次の質問です。会長はどんな人ですか?」

どんな人って言われても。

正直に言ったら王子様の仮面が剥がれ落ちてしまう。

「やはり、王子様の会長は優しいですか?」

答えづらい雰囲気にしないでほしい。

「………」

「すいません。彼氏の性格なんて答えづらいですよね」

「優しいですよ。あの王子様のままです」

あれ?

つい、嘘を言ってしまった。

和海は王子様なんかじゃないのに。
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