イジワルな彼は私を溺愛しています ②
「こ、こんなに人が来るなんて……」
紗知がステージ裏から顔を覗かせて緊張で震えた声で言った。
今、講堂には私がついさっき新聞委員会に撮られたあの映像が流れている。
「大丈夫だよ、あんなに練習したし」
亜矢の声もいつもの元気はない。
私はそんな2人を見て、ぎゃくに落ち着いていた。
軽くステップを踏みながら時間を待つ。
和海が来ると言っていたから皆客席を覗いている。
「会長まだかな?」
亜矢が言った。
「来るって言ってたからそろそろ来ると思うけど」
私も気になって覗いた。
「え…」
和海は顔は血だらけで、足に力が入らないのか渡辺先輩と翔先輩に支えられて歩いていた。
私は血の気が引くのが分かった。
一目散に静止の声を振り切って和海に向かって走った。