イジワルな彼は私を溺愛しています ②
「和海!大丈夫なの!?」

私の声は講堂に響いた。

「ああ。ちょっとな。俺もだいぶなまっていたらしい」

「今すぐ怪我の手当しないと!」

口の中が切れているのか、しゃべるのも辛そうだ。

「有紀のダンス見たら保健室に行く」

「ダメだって!ダンスなんて明日もやるんだから!」

「いいから。早くステージに行け」

「でも!」

「水沢さん、行ってきて。和海が我儘な性格だって分かってるでしょ?」

翔先輩が優しく微笑みながら言った。

「……わかりました。和海のこと頼みます」

私は翔先輩に頭を下げてからステージに戻った。

「会長大丈夫だって?!」

「ダンス見たら保健室に行くって…」

亜矢の声に力無く答えた。

「きっと大丈夫だから、ダンス成功させるよ!」

「うん」

「有紀ちゃん!!」

バシンッ

背中を思いっきし叩かれた。

「いっ」

「会長のこと忘れろとは言わないけど、ダンスはちゃんと踊ってよ!有紀ちゃん、ダンスで大切なことは?」

「…リズムと笑顔」

「分かってるならもっと笑って!!会長も輝いてる有紀ちゃんが見たいんだから!しょげてる有紀ちゃんなんて可愛くないよ!!」

私を励ましてくれてると分かる。

「センターの有紀ちゃんがそんな顔してたら、ダンスがダメになるでしょ!!」

「そうだね」

今は和海のことはおいといて、ダンスを踊りきることを考えよう。

「夏休みあんなに練習したんだから大丈夫!!!!」

「うん!」

ニコッと笑った。

「じゃ、行ってきな!!」

「へ?」

背中を押されて、心の準備がないままステージに出された。
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