イジワルな彼は私を溺愛しています ②
こんなに手伝ってくれてるのに、文化祭を一緒に回ってあげない私は恩知らずな人間に思えた。

「今度、時間があったら放課後にでも一緒に駅前にでも行きましょうか」

「「「「「ほ、本当ですか?!」」」」」

「はい。お礼として是非…」

親衛隊の圧に負けて、語尾が小さくなる。

「ありがとうございます!!では、文化祭楽しんで来てください!!!」

親衛隊はさっきとは打って変わって、今にも飛び上がりそうな勢いで去っていった。

「有紀」

「ひっ!」

私は一歩後ろに下がった。

和海は笑っていた。

ドス黒いオーラを撒き散らしながら。

「あいつらを放課後デートに誘ってどういうことかな?」

目は笑っていない。

「俺とも行ったことないのに」

「っ……」

もう、体は恐怖で震えている。

周りの人達が無意識に和海から離れるほど、今の和海は誰が見ても言いようのない恐怖に襲われるぐらい、怖い。

「有紀はもう宮沢で経験済みか」

「……っ!」

和海が私を壁に押しつけた。

「か、和海……」

「他の奴に有紀の初めてを渡すとか俺も馬鹿だな」

和海はくくっと笑いながら私に顔を近づけた。

「初めてって……」

そんなに大事なの?と言いそうになったが、言えなかった。

「大切に決まってるだろ。一生に一度しかないんだからな」

「はい……」

和海の鼻と私の鼻触れた。

「さあ、有紀はどうする?」

「な、何を……」

「どうやって俺の怒りを鎮めてくれるのかな?」

「あ、はぃ……」

和海の怒りを鎮めるなんて出来そうもない。

だがここで拒否したら命が危ない。
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