イジワルな彼は私を溺愛しています ②
「え?何?」

「なんでもない。ほら、あそこにいるだろ」

和海の視線の先には講堂の入口に立っている母と父がいた。

「あ、有紀よ」

母が気づいてくれたらしく、手を振っている。

しかし、学校で親に手を振られる身としては恥ずかしいかぎりだ。

「やめてよね」

私は苦笑しながら言った。

「お久しぶりです」

和海は母の前に行って頭を下げた。

「あら、お久しぶりね」

「お母さん、お父さんまで何で来たの?」

母はうふふと笑うだけだ。

父も答えるつもりはないらしい。

「まあ、いいけど。私ちょっと明日の準備があるから」

「有紀、いいのか?」

私は和海を連れて生徒会室に向かっている。

「しょうがないでしょ。今から、やる事沢山あるんだから。明日着る服、写真撮影の場所、仕込みの仕上げ。決める事は山ほどあるの」

「そうだがな。文化祭ぐらい家族で…」

「あのね、あの2人を邪魔する方が可哀想なの。結婚18年目にして、未だにラブラブ。お母さんなんていつもより声高いし」

「そうなのか。まあ、それなら今日の夕飯は一緒に食べて来い」

「そのつもり」

私は生徒会室の扉を開けた。
< 96 / 216 >

この作品をシェア

pagetop