アヴァロンの箱庭
目が覚めると、部屋は酷く冷え切っていた。
心音真冬(こころね まふゆ)はベッドから降りると、自室から一階に降りた。
殺風景なリビング。
空っぽの食器棚。
生活感を感じさせない家の中の有様に、真冬は首を傾げる。
家族は一体どこに行ったんだろう。早く、探さなくちゃ。
真冬はパジャマからセーターとズボンに履き替えると、グレーの毛皮で出来たコートを羽織ってカシミアのマフラーを巻いて玄関から飛び出し、そして息を呑んだ。
「何、これ……!」
小さな街はまさしく、銀色世界一色で塗りつぶされていた。
曇天で覆われた空からは綿毛の様な雪がゆっくりと降りしきり、立ち並ぶ民家の屋根は降り積もった雪で白く埋もれている。
屋根から垂れ下がった氷柱はさながら、この世で一番透明なクリスタルをいくつも集めて作った滝の様。
更には街全体を薄い霧が立ち込めていて、まるで静寂を可視化したかのようにひっそりと辺りを覆い尽くす。
そんな、針が地面に落ちた音さえ反響しそうな程に静まり返った街を、真冬は一人で歩いた。
暗闇で儚げに揺れる蝋燭の如く、静かに、密かに、儚げに。
どこを見渡しても人影は全く見当たらない。
廃墟と化した街中でアルファルトの道路を歩いていると、世界が自分を置き去りにしてどこかに行ってしまった気がして段々と心細くなってくる。
真冬は思わず、今すぐにでも大声で人を呼びながら走り出したい衝動に駆られた。
が、彫刻作品の様に静まり返った街の中でそれをするのは、芸術を冒涜している様な気がしてどうも気が憚れてしまう。
そうして歩いている内に、いつの間にか真冬は街の外に出ていた。
郊外には見覚えの無い雪原が広がっていて、真冬が雪を踏みしめる度にサクッ、サクッと足元がクッキーの様に小気味の良い音を立てる。
「ここは……どこなんだろう」
心音真冬(こころね まふゆ)はベッドから降りると、自室から一階に降りた。
殺風景なリビング。
空っぽの食器棚。
生活感を感じさせない家の中の有様に、真冬は首を傾げる。
家族は一体どこに行ったんだろう。早く、探さなくちゃ。
真冬はパジャマからセーターとズボンに履き替えると、グレーの毛皮で出来たコートを羽織ってカシミアのマフラーを巻いて玄関から飛び出し、そして息を呑んだ。
「何、これ……!」
小さな街はまさしく、銀色世界一色で塗りつぶされていた。
曇天で覆われた空からは綿毛の様な雪がゆっくりと降りしきり、立ち並ぶ民家の屋根は降り積もった雪で白く埋もれている。
屋根から垂れ下がった氷柱はさながら、この世で一番透明なクリスタルをいくつも集めて作った滝の様。
更には街全体を薄い霧が立ち込めていて、まるで静寂を可視化したかのようにひっそりと辺りを覆い尽くす。
そんな、針が地面に落ちた音さえ反響しそうな程に静まり返った街を、真冬は一人で歩いた。
暗闇で儚げに揺れる蝋燭の如く、静かに、密かに、儚げに。
どこを見渡しても人影は全く見当たらない。
廃墟と化した街中でアルファルトの道路を歩いていると、世界が自分を置き去りにしてどこかに行ってしまった気がして段々と心細くなってくる。
真冬は思わず、今すぐにでも大声で人を呼びながら走り出したい衝動に駆られた。
が、彫刻作品の様に静まり返った街の中でそれをするのは、芸術を冒涜している様な気がしてどうも気が憚れてしまう。
そうして歩いている内に、いつの間にか真冬は街の外に出ていた。
郊外には見覚えの無い雪原が広がっていて、真冬が雪を踏みしめる度にサクッ、サクッと足元がクッキーの様に小気味の良い音を立てる。
「ここは……どこなんだろう」