極甘同棲~エリート同期の独占欲を煽ってしまいました
雑誌を手に逡巡していると、不意にすぐ横に人の気配を感じて、顔を上げた。
と、意外な人物と目が合って、思わず後ずさる。

「三崎、さん」
マーケティング営業部の三崎英治、その人だった。あの彬良くんに対抗意識を燃やしていると噂のある。書棚にもたれかかるように肩をあずけて、わたしに無遠慮な視線を向けている。

なんの用だろう? 借りたい本がかぶった、とか?
値踏みするようにじろじろ見られて、苛立ちがわいてくる。目に力をこめて、彼をまっすぐ見返す。
ダブルブレストのベージュのジャケットは軽い一枚仕立てだ。中に合わせているのはえんじのニットポロ。ボトムはオフホワイトのグルカパンツと、アースカラーでコーディネートしている。テーマは、コロニアル&サファリってとこかしら。

気障にキマっているけど、プレスルームの今季のトレンドアイテムで上から下まで揃えましたという感じだ。

「広報部の宮原そよか、ちゃん、だよね」
馴れ馴れしい、言い回しと態度。

「そうですけど・・」
不審さが声と表情に出ているはずだ。雑誌を持つ腕が、だんだん重みに痛くなってきた。
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