極甘同棲~エリート同期の独占欲を煽ってしまいました
いつもみたいに、支度をして朝ごはんを食べて、彬良くんが運転する車に乗りこんだ。
車内ではほとんど言葉を発することなく、ただ前方に視線を据えていた。

ハンドルを握る彼の無言の横顔に、ちらりと目を向ける。
口元は固く結ばれ、あごのラインも、眼差しもいつもより鋭く研ぎ澄まされているようにさえ感じられる。
その表情には焦燥感なんて、微塵もない。

彼が怜悧な頭脳で、今なにを考えているのか、わたしには分からない。
ただ、彼を信じている。

だから———わたしたちは負けない。
キーボードを打つ指に、力をこめる。

そう思ったのに、わたしが、自分が負った本当の傷に気がついたのは、その夜のことだった。
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