極甘同棲~エリート同期の独占欲を煽ってしまいました
チーフ格とおぼしき一人の女性が、思い切ったように話しかけてきた。
「すみません、あの、佐伯さんですよね」

「はい、こんにちは」
彬良くんは気負いなく答える。

「ご来店ありがとうございます。佐伯さんのTSU・KU・RO・Uプロジェクト、おかげさまで好評いただいてます。今日も何件か問い合わせいただいてるんですよ」
接客スマイル以上に親しみのこもった笑顔をみせる。

「それは何よりです」

「リメイクっていう新しい分野で学ぶことも多いですけど、そのぶんやりがいがあります」

「僕は図面を引いただけで、形にしてくれたのは現場のみなさんです」

「ありがとうございます・・・今日は、プライベートですか」
ちらりとこちらに視線を向ける。

「ああ、デートで」

「まあ、そうなんですね」

「たまに来たくなるんです」

「何かご意見ありましたら、いつでもおっしゃってください」

石化するわたしをよそに、にこやかに会話を交わす。
ゆっくりしていってください、と言ってくれたけど、やっぱり恥ずかしくて、わたしは彬良くんを引っぱるようにそそくさと店を出てしまった。

「あ、あんなにはっきり言ったら、来週にはもう社内に広まっちゃうよ」

「いいじゃん別に」
まるで悪びれない。

なんだろう突然のこの行動。三崎さんへの宣戦布告なのかな。
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