極甘同棲~エリート同期の独占欲を煽ってしまいました
「なんで俺に直談判しようなんて思い立ったわけ」
そう問う声は穏やかだ。

「なんにもできない自分が、いやだったの」

だからつい、本音がこぼれた。
「周りはみんな、才能があってなんでもできる人ばっかり。VMDの早坂美奈さんなんて、店舗のデザイン画を描いて、予算の交渉して、資材の調達をして、現場で指揮をとって、しまいには大工さんみたいに電動工具を使って、設営までこなして。店舗の売り上げの分析をして。
わたしは何一つできないし、だからこそアシスタントなんだけど、でも毎日そんな誰でもできるような仕事ばっかりだと、情けなくなってきて・・・」

口に出してしまうと、われながらひがみっぽい愚痴だった。言いながら、恥ずかしくなってくる。

うん、うんと、それでも彬良くんは相槌を打ちながら耳を傾けてくれる。

よく時計なんかで例えられるけどさと、ゆっくり口を開く。
「どんな小さな部品でも、それが一つでも欠けたら機械は動かない。無駄なパーツはないから。
そういう風には考えられないってこと?」
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