極甘同棲~エリート同期の独占欲を煽ってしまいました
『お久しぶりです、三崎です』
そのメッセージは、社員共有のチャットツールを使って送られてきた。

ポップアップ画面に表示されたその名前に、瞬時に思考も動作も停止してしまった。
なぜ、なぜ・・・水中にいるような息苦しさを覚えながらも、目はそこに吸いつけられてしまう。

タイミングを計ったように次のメッセージが送られてくる。
『突然ですけど、今日3時に、ビルの一階のカフェでお会いできませんか。待ってます』

震える手で、メッセージ画面を閉じた。
彬良くん、心の中で助けを求める。次の瞬間、彼は今日一日出張だということを思い出した。日帰りだけど、帰りは遅くなるから夕飯はいらないと言われたんだった。
彬良くんがいない。まるで、三崎さんと会社に取り残されてしまったような心もとなさに襲われる。

行っちゃダメだ、無視しろ、と心の中では警告が発されている。自ら獣の口中に飛びこむようなものだ。

なのに———それはものすごく矛盾した感情で。例えるなら、心ならずも見てしまったホラー映画の続きを、恐ろしいとわかっているのに覗いてしまう心理のような。

先が見えない彬良くんとの関係に、三崎さんが答えをくれるはずなんてないのに。
彼が何を言い出すのか知りたい———悪魔の誘惑だと分かっていても、わたしは抗うことができなかった。
< 150 / 205 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop