極甘同棲~エリート同期の独占欲を煽ってしまいました
「そよかちゃん、今日着てるワンピースすごく可愛いね。よく似合ってるよ」

この間とは打って変わった彼の態度に、肩すかしを食らった気持ちになりつつも、警戒心は深まるばかりだ。

「Eurekaが今シーズンから取り扱いはじめたロンドン出身の若手アーティスト、イーリー・マッコイのデザインだね」

「よくご存知ですね」
用心しいしい答える。

「僕がバイヤー部に指示出してるから」

一目惚れしたすずらん柄のモチーフのワンピースが、急に三崎さんの手先のように思えてくる。

「その素敵なワンピースをまとったきみを、連れてゆきたいお店があるんだ」
今夜。とじっとこちらを見据えて、芝居がかった口調でわたしに告げる。

「せっかくですけど・・」反射的に言いかけるのを遮るように、「佐伯くんのこともあるし」と狙いすましたようにその名を口にする。

彬良くんの・・・?

「じゃああとで、チャットで場所と時間を連絡するから」
そう告げて、さっと立ち上がってその場を去ってゆく。

逃げられないように、断れないようにひとを追い詰めるのが、彼の手口なのか。
まんまと術中にはまって、卑怯者、とその背に投げつけることさえできないわたしは、やっぱり弱くて愚かだ。

目の前のトレイには、口をつけられないままのカフェオレが、すっかりぬるくなっている。
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