極甘同棲~エリート同期の独占欲を煽ってしまいました
「佐伯くんは、間違いなく優秀な男だ。選ばれてニューヨークに行くことになるだろう。そして、きみは日本に残される」

自分の口元がこわばるのが分かる。

「ねぇそよかちゃん、きみはすごく魅力的な女性だ。素直さと一生懸命さっていう得がたいものを持ち合わせていて、周りを和ませてくれる。おまけにとてもチャーミングだ。自分でそのことに気づいていないのが残念だな」

このひとは、危険だ。本能がそう告げている。
子どもの頃に観たアニメに出てきた、悪い魔法使いを思い出す。パイプからくゆらせる煙に巻かれた者は、哀れ催眠術にかけられたようになってしまうのだ。

「僕はそれをきみに教えてあげたいんだ。まぁそれだけじゃなくて、色々とね。今夜はその一回目だ」

さあ乾杯しよう、彼がかるくグラスを持ち上げる。

わたしの前には、きれいな色のカクテルが置かれている。それにのろのろと指を伸ばしたとき———

「二回目はないですよ」
明瞭な声が、けぶる場の雰囲気を一掃する。
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