極甘同棲~エリート同期の独占欲を煽ってしまいました
一瞬それは、わたしの願望が生んだ幻のように思えた。
だってまさか———信じられない。その声の持ち主を、わたしが聞き間違えるはずがない。

わたしたちのテーブルの前に、いつのまにか現れた人物は———

「彬良くん・・・」
驚きと安堵の感情が膨れてごちゃまぜになって、押し寄せてくる。

「奇遇ですね、三崎さん」
そう口にしながら、さりげなく空いている席に腰を下ろす。

さすがの三崎さんもあっけにとられている様子だ。
「どうして・・佐伯くん、今日は・・」

「ええ、出張でしたよ」さらりと言葉を継ぐ。
「わざわざ僕のスケジュールをチェックしてもらっているみたいで、痛み入ります」

共有のスケジュール管理システムに入力してあれば、社員ならば誰でも見ることは可能だ。じゃあ、三崎さんは彬良くんの予定を知ってこの日を選んだのか。
ようやくそんなことに思い至る。

「思いがけず予定が早く終わりましてね。会社に戻るのもなんなので、ホテルでリモートワークを決めこんでたんですが。夕飯を食べにきたら、見知った顔を見かけたもので」
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