極甘同棲~エリート同期の独占欲を煽ってしまいました
いくらわたしでも、そんな偶然はないことくらい分かる。
彼はすべてを読んだ上でここに現れた。でも、どうやって? 彬良くんのほうこそ魔法使いに思えてくる。

「しかし、会社の経費でひとのものに手を出すのはやめていただきたい」

三崎さんに向けられる彬良くんの視線はどこまでも冷ややかで、口調にはまったく容赦がない。

「・・っ、人聞きが悪い」うなるように言葉を吐く。
「彼女は、自分の意思でここにきたんだ」

形勢を立て直そうとしているけれど、どうみても三崎さんの分が悪い。

「あなたの動きは定石通りで、底が浅い。だから実に読みやすい。まずターゲットのすべてを否定し、次に逆に持ち上げる。相手に自信を失わせ、価値判断を自分に委ねさせ、都合よく操ろうとする。インチキ宗教なんかでも使われる、ありふれた洗脳の手口ですね」
研ぎ澄まされた刃物のように鋭く、彼の言葉が三崎さんを断罪する。

浅黒い三崎さんの顔は、赤と青の凄まじいまだら模様に染まっていた。押し黙ったまま、血走った目で彬良くんを睨みつけている。
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