極甘同棲~エリート同期の独占欲を煽ってしまいました
ダークネイビーのシンプルな革のバゲージタグ。スーツケースの持ち手につけるタイプだ。
そこに【Akira Saeki】と金字で名入れされている。

「ニューヨークの空港は、スーツケースにベルト禁止だって言ってたから。これなら目印にいいんじゃないかなって」

「よく憶えてるな」
じっと彼が手にしたタグに視線を注いでいる。

「憶えてるよ、そりゃ」
大好きなひとのことだもの。

「俺は———そよかに名入れの物は贈らないな、今は」

「どうして」

「そよかの名字はいずれ佐伯になるから。使えなくなっちゃうだろ」

「彬良くん・・・」続ける言葉を失う。

「今は、それがいつになるか分からないけど」

「・・うん」
どこまでも前向きな彼の言葉は、恋愛初心者のわたしを救ってくれた。

「ありがとう、大切に使うよ」

彬良くんからは、あまりにも大きな、あまりに沢山のものを与えてもらった。それは多分、生まれてから今までずっと。ささやかでも、そのお返しがしたかった。
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