極甘同棲~エリート同期の独占欲を煽ってしまいました
返事は力いっぱいの抱擁だった。一瞬息が止まるくらに激しく抱きしめられる。
耳もとでささやく声がする。「そう言ってくれるのを、ずっと待ってた」

「あのね・・彬良くん」
彼の胸に顔をうずめているせいで、くぐもった声になる。

「ん?」

「わたし、やっぱりできないことだらけだし、迷惑じゃないかな・・・」

「今に始まったことじゃないだろ、何年一緒にいると思ってるの」
ぽんぽんと、彬良くんがわたしの頭を撫でてくれる。幼いあの日の頃のように。

「だいたい、そよかが何でもできたら俺の立場がなくなっちゃうだろ」

自分のいる場所に帰ってきたような懐かしさと、安堵感と、自分への呆れがないまぜになって、体から力が抜けてゆく。
どうして今まで気がつかなかったんだろう。わたしってやっぱり頭が悪い。

周りに必要とされたい、特別な存在になりたい、なんてしゃかりきになっていた。
わたしはとっくに、彬良くんの特別で必要な存在だったのに。彬良くんはいつもそう伝えてくれていたのに。

自分にとっての唯一の人が、自分を欲し必要としてくれているのに、これ以上何を望むんだろう。

それに気づくのに、二十四年もかかってしまった。
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