極甘同棲~エリート同期の独占欲を煽ってしまいました



「北川さん、『志緒乃』の生菓子、買ってきました〜」
手にした紙袋をかかげてみせる。

「わぁ、サンキュー」
北川さんがホッとしたように、手を胸の前で組み合わせる。

冷蔵庫に入れときますねと告げる。

「あーよかった、『志緒乃』って予約不可だし、並ばないと手に入らないから。今日会うデスクって前にグルメ雑誌担当してたから、手みやげにうるさくて」

北川さんが誰ともなしに口にすると、「いるよねーそういう人」と美奈さんがうんうんとうなづく。

「打ち合わせだけじゃなくて、手みやげにまで神経使わなきゃいけないっていう」

「そよかちゃんがその手の情報集めてくれたり、お使い行ってくれるから助かるよ、ほんと」

「お使いなんて小学生でもできますよー」

何気なく返したその言葉に、思いがけず深く胸をえぐられる。
入社したばかりの頃は、どんなことでも誰かの役に立てたら、それだけで嬉しかったのに。

多忙なプレスの北川さんに、並んで手みやげを買う余裕はないから。
そのためのアシスタントで、だからわたしがいるんだけど。

だけど———本当に小学生でもできる仕事なんだな。
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