極甘同棲~エリート同期の独占欲を煽ってしまいました
落とし気味にされた照明に、テーブルの上のロウソクの炎が陰影にかすかな揺らぎをもたらしている。

緊張気味のわたしとは対照的に、彬良くんは慣れた物腰でメニューとワインリストを受け取っている。
ノータイのジャケット姿だけど、遊びのないデザインなだけに生地と仕立ての良さが光っている。
それを肌の一部のように身につけている彼の姿はやはり水際立っていて、黒服のウェイターの態度も上客に対するものだ。

料理はコースで、ワインはおすすめを聞いてから、舌を噛みそうな名前の赤ワインを選んだ。
「そよかは? カクテルでいい」

「あ、うん」

「じゃあ、ミモザを」

かしこまりましたと、黒服が一礼して下がる。

わたしたちのあいだには沈黙がおりたまま。やがて飲み物が運ばれてくる。
ややぎこちなく、二人で乾杯する。

「彬良くんすごいね、こんな隠れ家みたいなお店知ってて」
とりあえず思いついたことを口にする。それにしても子どもっぽい感想だなって自分に突っこむ。

「商談ってやつが多いから、レストランやらワインにも詳しくなってきたよ」

そう口にしながら、長い指でワイングラスの細い柄をなぞる彼が、テーブルを挟んで向かいにいる。
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