極甘同棲~エリート同期の独占欲を煽ってしまいました
「そういう意味で、ちょっと残念な方があちらに」
と視線を横に流す美奈さん。

マーケティングの三崎さんね。視線の先の人物をとらえて、北川さんがつぶやく。

休憩コーナーの一角で、同僚とおぼしき人と談笑している男性。
マーケティング営業部の三崎英治。わたしもいちおう名前と顔は知っている。

肌が浅黒くどちらかというと彫りが深い、エキゾチックと形容できなくもない容貌だ。よく手入れされた短いヒゲを口のまわりに生やしている。
ブルーデニムにジャケットというカジュアルなスタイルだけど、デニムはおそらくヴィンテージだ。足元は素足に、これもハイブランドのものだろうビットローファー。
メンズファッション誌のスナップから抜け出てきたみたいな出で立ちだ。

「残念、ですか?」
美奈さんに問うてみる。
ひじをパーテーションにあずけて片足を組んだ彼の立ち姿にも、隠しきれない自意識がにじみ出ているけれど。
カッコつけるのは、この業界の習い性みたいなものだしと思ったり。

うん、と美奈さんの返事は簡潔で。
「ジャケットにファイブポケットのデニムを合わせるスタイルって、背が高くて足が長くないとキマらないんだよね。もともとはデニムってカウボーイの作業着だから」
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