極甘同棲~エリート同期の独占欲を煽ってしまいました
離れたところから眺めると、スタイルの良さがよく分かる。
知らずに彼を見た人は、アパレル系の会社ということもあって、「モデルさん?」と思うらしい。

180センチを超える長身に、長い手足、小さな顔、と三拍子そろっている。
そして社内の女性が「完璧なクール系美男子」と評する整った顔立ちだ。

全てを持ち合わせている “王子” のことになると、わたしの口数が少なくなることは、誰にも気づかれていない・・・といいのだけど。

当の本人は、周囲の視線をそよ風ほども気に留めていないようで、缶コーヒーを自販機から取り出している。

「よし」と意を決したように、テーブルに手をついて北川さんが立ち上がる。
「当たって砕けろ、だわ。行ってくる」
自分に言い聞かせるようにそう口にして、ためらいのない足どりで王子のほうへ向かう。

「健闘を祈る」と美奈さんがつぶやく。

北川さんが王子を呼び止めて、二人がなにごとか言葉を交わしている。
そう長い時間ではなかった。
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