極甘同棲~エリート同期の独占欲を煽ってしまいました
王子が片手をあげて、制するようなジェスチャーをして、そのまま北川さんに背を向ける。

北川さんとて追いすがるような真似はしない。かるく首を振りながら、こちらに戻ってくる。
小顔で美人でなければ似合わない、センターパーツのボブカットを明るい栗色に染めている。
細身のシルエットのパンツに、異素材を組み合わせたカットソーという装いは、いかにもアパレル業界で働く女性という感じだ。

十人が十人、垢抜けた美人と評するだろう北川さんの再三のお願いにも、首を縦にふらない人。それが佐伯彬良。

「はぁ、社外の人と交渉する方がまだ楽だわ。王子め」
どさっと椅子に身を沈める。

「うちの宣伝にもなることなのにねぇ」
香織さんが頬をふくらませる。

「僕はあくまでも裏方。表に出る立場じゃないんで、って」

「それを言われちゃうとなあ」と美奈さんが眉を寄せる。

「まぁ、めげずに向こうが根負けするまでアタックするわ」
気を取り直したように、北川さんが口にして、腕時計に目をやる。
「おっといけない、そろそろ戻らないと」

その言葉をしおに、みんなが腰をあげる。

デスクに戻ると、わたし以外のメンバーは慌ただしく外出のしたくを始めた。
< 5 / 205 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop